ピルの服用を検討されている方に向けて、中用量ピルについて幅広く解説していきます。
中用量ピルの服用を検討される方は、「イベントと月経が重なってほしくない」と思われる方がほとんどではないでしょうか。
しかし「服用方法がわからない」「どのタイミングで服用すれば良いの?」と悩んでしまうことも少なくありません。
そこで今回の記事では、中用量ピルの効果や副作用、服用方法などをまとめて解説します。
低用量ピルとの違いも紹介しますので、参考にすることで中用量ピルに関する基本的な知識を得られます。
中用量ピルとは?
中用量ピルとは、エチニルエストラジオールを50μg含有するピルのことを指します[1]。
エチニルエストラジオールとは、エストロゲンを誘発させる成分のことです。
それでは低用量ピルとはどのように違うのでしょうか?
使用する目的や、処方してもらうときの費用も含めて詳細を見ていきましょう。
低用量ピルとの違い
低用量ピルと中用量ピルとの違いは、エチニルエストラジオール含有量に由来します。
含有量について改めてまとめてみます。
【ピルのエチニルエストラジオール含有量】
- 低用量ピル:30~40μg
- 中用量ピル:50μg
- 高用量ピル:50μg以上
以上のように、ピルの種類はエチニルエストラジオールの含有量によって分類されます。
低用量ピルは30~40μgの含有であるのに対し、中用量ピルは50μgとエチニルエストラジオールの含有量が多いことが違いです。
つまりピルの「用量」とはエチニルエストラジオールの含有量のことであり、低・中・高となるごとに含有量が増えると考えてください。
使用する目的
中用量ピルを使用する目的は、月経に関する問題を解決したり、避妊をしたりすることにあります。
月経トラブルであればPMSや不正出血、生理痛、生理不順などを改善する効果が期待できるでしょう。
また避妊のために使用する方もいます。
以上のように、月経トラブルや妊娠を回避するために使用される方がほとんどです。
費用
中用量ピルを処方してもらうための費用は、3,000~5,000円ほどが相場となります。
病院によって費用は異なるでしょうが、3,000円を目安と考えて良いでしょう。
ご紹介した費用は、初診料を加えた料金だと考えてください。
中用量ピルの効果・使い方
これから中用量ピルを使いたいと考えられている方に向けて、具体的な効果や使い方について解説します。
ピルの服用に不安や疑問がある方は、効果をしっかりと把握したうえで処方を受けましょう。
月経移動
中用量ピルはほとんどの場合で、月経移動のために処方されます。
月経移動とは「月経があるであろう」と考えられる周期をずらすことです[3]。
たとえば試合や遠征、旅行、結婚式などがあるとき、月経が重なってほしくないと思われる方は多いもの。
スポーツをしている方であれば、月経の有無によってパフォーマンスが変わってしまうこともあるかもしれません。
そこで中用量ピルを用いて、月経周期を調整します。
低用量ピルに比べて、月経調整の確実性が高いのが中用量ピルです。
その理由はエチニルエストラジオール配合量が低用量ピルよりも多いため。
確実に月経をずらしたいと思われる方には、中用量ピルが処方されることがほとんどです。
ピルを用いると始まってほしい日に月経を移動させられます。
短期間の移動であれば身体への影響は少ないとされています。
大切なイベントと月経が重なる場合、月経移動のために中用量ピルを求められる方は多く見られます。
その他(治療・症状改善など)
治療や月経に関する症状改善のために中用量ピルを服用される方も少なくありません。
たとえば次のような目的が考えられます。
【症状改善目的での使用例】
- 不正出血
- 月経過多
- 月経困難症
- 子宮内膜症
月経に関するつらい症状をやわらげるためには、低用量ピルが用いられることが多いものです。
しかし中用量ピルはエチニルエストラジオール含有量の多さから、より高い効果が期待できるとされています。
たとえば不正出血を緊急的に止めたい場合などであれば、中用量ピルが処方されるでしょう。
以上のように婦人科系の症状が見られる場合は、状況に応じて中用量ピルが処方されることがあります。
中用量ピルの服用方法・タイミング
中用量ピルの効果を引き出すには、服用方法やタイミングを守ることが大切です。
月経移動に用いるケースと考えて、月経を早める場合、遅らせる場合の2パターンから見ていきましょう。
服用のタイミングを間違えると、月経の移動にも失敗してしまうことがあります。
正しい服用方法とタイミングを覚えることが、希望する月経タイミングを得るために最も大切なことです。
月経を早める場合
月経を早めたい場合に服用するなら、次の条件を満たさなければなりません。
【服用条件】
- 前回の月経が始まって5日目までに服用すること
- 月経を希望する日の2~3日前まで服用を続けること
早めたい月経の前にきた月経が始まって、5日目までに服用することが第一条件です。
それから服用を続けて、次の月経希望日の2~3日前に服用をやめると希望する日程に調整できるようになります。
ピルの服用をやめると、その後2~3日で月経が始まってしまうはずです。
そのため月経開始希望日の2~3日前でやめることがポイントとなります。
月経を遅らせる場合
続いて月経を遅らせたい場合は、次の条件を満たしましょう。
【服用条件】
- 月経が始まるはずの日の5日前から服用すること
- 月経を希望する日の2~3日前まで服用を続けること
月経開始を希望する日の2~3日前まで服用を続けることは、月経を早めたいときと同じです。
しかし服用を始めるタイミングが違います。
月経が始まるはずの本来の予定日から遡り、5日前から服用するようにしてください。
それから月経開始を希望する日の2~3日前まで飲み続けることで月経を遅らせられるようになるでしょう。
中用量ピルに副作用はある?
中用量ピルを服用すると、次のような副作用が現れることがあります。
【副作用】
- 吐き気、嘔吐
- 発疹、湿疹
- かゆみ
- 不正出血
- 便秘、下痢
- 眠気
- 頭痛
- 肩こり
- 食欲減退
- 肝臓機能異常
- 胸の張り
- 口内炎
- ほてり
- むくみ
- 腰痛
- 体重増加
中用量ピルは低用量ピルよりもエチニルエストラジオールの配合量が多いため、副作用が出やすいとされています。
吐き気や便秘・下痢といった消化器系症状のほか、かゆみや発疹などの皮膚症状が出ることもあります。
肝臓機能に異常が生じることもあります。
また次のような重篤な副作用が発生する可能性も否定できません。
【重篤な副作用】
- 血栓症(疼痛・息切れ・共通・四肢脱力・麻痺・視力障害・言語障害など)
- アナフィラキシー
副作用が現れる確率は低いとされますが、全く起きないとは言い切れません。
そのため吐き気止めの処方薬を同時に処方されることもあるでしょう。
血栓症やアナフィラキシーなど重篤な副作用の兆候がある場合は、速やかに医療機関を受診し、適切な処置を受ける必要があります。
月経移動ができたとしても、副作用が現れる可能性があることを知ったうえで服用しましょう。
中用量ピルは誰でも服用できる?
中用量ピルは体調や既往歴によっては処方されないことがあります。医師が健康上のリスクを判断した場合には、服用が制限されると考えておきましょう。
それでは具体的にどのようなケースで服用できないのか見ていきましょう。
服用できないケース
次のような条件に当てはまる方は、中用量ピル処方不可となる可能性があります。
【処方不可となる一例】
- 片頭痛、高血圧、糖尿病、心臓弁膜症、心房細動、肝機能障害がある方
- 妊娠中の方
- 喫煙量の多い方
- BMI30以上の方
- 血栓症になったことがある方
中用量ピルは副作用として血栓症を引き起こすことがあるため、高血圧や心臓関連の病気、血栓症の既往歴がある方には禁忌とされます。
また避妊薬としての役割も果たすため、妊娠中の方も処方を断られるでしょう。
上記でご紹介した例以外にも、医師の判断によって処方できないと判断されることがあるかもしれません。
中用量ピルを服用する際の注意点
最後に、中用量ピルを服用する際の注意点について解説します。
これから服用したいと考えられているなら、事前に注意点について知っておき、正しく安全に服用できるようにしてください。
特に注意すべき2つのポイントをご紹介しますので、ピルの処方を受けるまでに確認しておきましょう。
注意点①飲み忘れたときの対応
中用量ピルを飲み忘れたときは、気付いてからなるべく早めに服用してください。
ただし「24時間以内に気づいた場合」のみです。
24時間以上飲み忘れた場合は、避妊や月経調整の効果が得られない可能性が高いため、必ず医師に相談してください。
もし飲み忘れてから24時間以内に気づいたなら、早めに服用し、その後はそのまま飲み続けましょう。
注意点②服用中に医師へ相談すべき症状
服用中に次のような症状が現れたら、できる限り早めに医師に相談するようにしてください。
【症状の一例】
- 足の痛み、しびれ、麻痺
- 視力障害
- 言語障害
- 鋭い胸の痛み
- 激しい息切れ
上記のような症状が現れた場合、副作用として血栓症が引き起こされている可能性があります。
血栓症とは、血管内に血液の塊が生じて血流を阻害している状態を指します。
脳梗塞や心筋梗塞につながるおそれもあるため、上記のような症状が見られたらなるべく早めに病院を受診しましょう。
中用量ピルは月経移動に効果的
いかがでしたでしょうか?
この記事を読んでいただくことで、中用量ピルの使い方や効果、副作用についてご理解いただけたと思います。
中用量ピルは月経移動に多く用いられ、大切なイベントと月経が重ならないよう調整できる便利な処方薬とされています。
ただし、副作用のリスクがある点には注意が必要です。
Ladies clinic LOG 原宿では、患者様の健康維持のために役立つ医療サービスを提供しています。
ピルも複数種をご用意しておりますので、ピルを服用したいと検討されているならぜひお気軽にご相談ください。
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[1]
参照:JSTAGE:(PDF)低用量経口避妊薬の使用に関するガイドライン
[2]
参照:JSTAGE:(PDF)経口避妊薬とステロイドホルモン動態
[3]
参照:FemaleSportナビ:試合などに向けて月経をずらす方法は?~継続的な月経の調節~
[4]