HPV

HPVとは

ヒトパピローマウイルス(HPV)は、皮膚病や性感染症の原因として知られるウイルスで、種類は少なくとも200種類以上が確認されています。

HPVはほとんどのヒトが感染しているごくありふれたウイルスです。
多くのHPVは症状が出ないウイルスのため、感染しても気づかないまま生活している方がほとんどです。

HPVには皮膚型HPVと粘膜・性器型HPVの2タイプがあります。

皮膚型HPVは皮膚接触で感染し、主な症状は手足のイボ(尋常性疣贅じんじょうせいゆうぜい)です。
粘膜・性器型HPVは子宮頸がんや子宮頸部異形成、尖圭せんけいコンジローマを引き起こす場合があります。

HPVに感染する原因

HPVは、性行為によって感染します。

他の接触感染や飛沫感染、空気感染は基本的にはありません。

HPVの型と疾患

尖圭コンジローマ

6型・11型が主なものです。

6型・11型は、低リスク型と呼ばれるHPVです。
がん化のリスクは低いものの、尖圭コンジローマなどの外陰部の良性腫瘍(コンジローマ)を引き起こすことが知られています。

また、がん化のリスクがあるハイリスクHPV16型・18型でも尖圭コンジローマを発生することもあります。

子宮頸がん

16型・18型・31型・33型・39型・45型・51型・52型・53型・56型・58型・59型・67型・68型が関連するハイリスクHPVになります。

この内、頸がん患者に占めるHPV16型・18型の割合は65.4%と多くを占めています。

子宮頸がんは、ハイリスク型HPVに持続感染した状態が長く続くと、ウイルスの発がん遺伝子により宿主細胞のがん化が誘発されると考えられています。

そのため、ハイリスク型HPVへの感染を防ぐことが子宮頸がん予防に重要となります。
定期検診とあわせて、適切な時期にHPVワクチン接種を検討することが重要とされています。

口腔がん

16型 ・18型が関与しています。

16型と18型は子宮頸がんのリスクを高めることでも良く知られていますが、口腔がんのリスク因子となることも明らかになっています。

口腔がんの約25%程度がHPV関連、特にHPV16型が全体の90%以上を占めるとされています。
HPV陽性の口腔がんは、喫煙や飲酒との関連が少なく、性行為による感染が主な原因と考えられています。

咽頭がん

16型 ・18型の感染が原因となります。

これらのHPVはハイリスクHPVと分類されています。

HPV16型が咽頭がんに最も強く関与しており、HPV陽性の咽頭がん全体の90%以上を占めると報告されています。
HPV18型も咽頭がんの一因となり得ますが、HPV16型ほど強い関連は指摘されていません。

咽頭がんの危険因子としては、喫煙や過剰な飲酒など従来の要因に加え、近年HPV感染の関与が明らかになってきました。

特に若年層の咽頭がん増加とHPV感染との関連が指摘されています。

外陰がん

16型・18型・31型・33型・45型が関係しています。

これらの高リスク型HPVが外陰がんの発症に深く関与していると考えられています。

中でもHPV16型が最も重要で、外陰がんの約70%がHPV16型に起因するとされています。

外陰がんは比較的まれな疾患ですが、近年、高リスク型HPVとの関連が明らかになってきました。
HPV感染は外陰がんの主なリスク因子の一つと位置づけられています。

肛門がん

HPV16型、HPV18型が肛門がんの発症に深く関与していると考えられています。

中でもHPV16型が最も重要で、HPV陽性の肛門がん症例の約90%をHPV16型が占めるとされています。

HPV16型や18型への持続感染が、肛門の上皮細胞のがん化を促進すると考えられています。

そのため、HPVワクチンによる高リスク型HPVの予防が、肛門がんのリスク低減にもつながると期待されています。

特に男性は女性に比べて肛門がんの発症リスクが高いため、ワクチン接種が強く推奨されています。定期的な検診とあわせてHPVワクチン接種を検討することが重要です。

陰茎がん

HPV16型、HPV18型が関係しています。

これらの高リスク型HPVが陰茎がんの発症に深く関与していると考えられています。
HPV16型が最も重要で、HPV陽性の陰茎がん症例の約60%をHPV16型が占めるとの報告があります。

陰茎がんは比較的まれな疾患ですが、HPV持続感染が陰茎上皮細胞のがん化を促進する可能性が指摘されています。

そのため、HPVワクチンによる高リスク型HPVの予防が、陰茎がんのリスク低減にもつながると期待されています。
現在、国内で承認されている4価ワクチンのガーダシルには、16型と18型に対する予防効果があります。

子宮頸がんや子宮頸部異形成に関与するHPV

子宮頸がんに関係するHPVは、誰でも当たり前に感染する可能性があります。

およそ80%の女性が人生で一度は感染していると言われています。
特に近年、若い女性の子宮頸がん罹患が増えています。

感染したHPVは潜伏期間を経て持続感染となり、感染したウイルスの種類や場所、個人の体質によって、子宮頸がんや子宮頸部異形成、ときに尖圭コンジローマを引き起こすことがあります。

HPVにはおよそ200の種類がありますが、がんと関連のあるハイリスクタイプは13種類が報告されています。
特に発がんに至りやすいハイリスクタイプは16型と18型の2種類です。

HPV感染のピークは性的活動が活発になる20歳前半にあり、年齢が進むにつれて感染率が低下します。

しかし、高齢になってから感染することもあることが報告されています。
これは若いときの性交渉の相手の多さが関係しており、高齢化に伴う免疫力の低下によって潜伏感染していたHPVが再活性するからと言われています。

HPV感染の多くは2年以内に自分自身の免疫力で自然に排除され、持続的な感染はしません。
しかしながら、少数の女性ではHPVが持続的に感染して子宮頸がんを発症します。

子宮頸部異形成

HPV検査の種類と型の判別

HPV簡易ジェノタイプ(3種類)

16型・18型・その他(31,33,35,39,45,51,52,56,58,59,66,68型)

子宮頸部細胞診でASC-US以上で保険適用

HPV簡易ジェノタイプ(9種類)

16型・18型・31型・45型・51型・52型・(33と58型)・(35と39と68型)・(56と59と66型)

子宮頸部細胞診でASC-US以上で保険適用

HPVジェノタイプ(13種類)

16型・18型・31型・33型・35型・39型・45型・51型・52型・56型・58型・59型・68型

コルポスコピー検査でCIN1以上で保険適用

HPVの検査方法

子宮頸部細胞診HPVは子宮頸がん検診と同様に、子宮頸管をブラシでこすり、検体を提出します。

切除などは行わないため、痛みは少ない検査になります。

HPV検査の結果は1週間程度で戻ってきますので、そのタイミングで結果をご説明します。

検査をご希望の方は、自費での検査も行っています。

子宮頸がん検査とHPV検査の関係性

コルポカメラ子宮頸がん検診の結果(ベセスダ分類)が【LSIL、ASC-H、HSIL、SCC、AGC、AIS】と診断されたときはただちに精査が必要であり、コルポスコピー検査を実施します。

ASC-USの場合だとハイリスクHPV検査が陽性の場合にコルポスコピー検査を行います。

ASC-USの50%にHPVが検出されますので、ハイリスクHPV検査を用いた管理が必要になってきます。

慎重な管理が必要となるHPVの型

  • 16型・18型・31型・33型・35型・45型・52型・58型のいずれかのHPVが陽性
  • 子宮頸がん検査の結果が陰性(NILM)であっても、ハイリスクHPVの検査結果で陽性が続いている
  • HPV16型・18型のいずれかのHPVが陽性

コルポスコピー検査

HPV感染の予防方法

ヒトパピローマウイルス(HPV)感染を確実に予防するためには、HPVワクチンの接種しかありません。

予防接種の種類

サーバリックス

16型・18型の感染を予防する2価ワクチン

ガーダシル

16型・18型・6型・11型の感染を予防する4価ワクチン

シルガード9

16型・18型・6型・11型・31型・33型・45型・52型・58型の感染を予防する9価ワクチン

子宮頸がんワクチン

2013年4月から、小学校6年生から高校1年の女子を対象に定期接種化されています。
15歳未満では2回、15歳以上では3回のワクチン摂取を行います。

その他の予防法としてはコンドームの正しい使用など安全な性行動の実践が大切です。

また、定期的に子宮頸がん検診を受けることで、がんになる過程の異常(異形成)やごく早期のがんを発見できます。

HPVワクチン接種と子宮頸がん検診の両方を組み合わせて、子宮頸がんの予防に努めましょう。

検査と治療にかかる費用の目安

内容 料金
初診料 890円
再診料 380円
HPV検査(3種類) 2,600円
HPV検査(9種類) 2,600円
HPV検査(13種類) 7,600円

関連ページ

TOPへ