子宮頸部異形成

子宮頸部異形成とは

検査室子宮頸部の上皮に異形成が認められる段階です。正常ではない細胞が発生・増殖するため、「子宮頸がんの前がん状態」とも呼べます。近年の日本では、20~30代の患者数が一気に増えているので、早めに検査を受けることが重要です。HPV(ヒトパピローマウイルス)による持続感染によって発症するのではないかと考えられています。
HPVは200種類以上もあるウイルスです。危険なタイプの中でも、異形成が生じるHPVはたったの数%程度です。
また全ての異形成が、がんへ移行するとは限りません。軽度のものでしたら自然と治ります。しかし、少しずつ異形成の度合いが悪くなっていく可能性もあります。

子宮頸部異形成などの悪性化によって起こる子宮頸がんは、初期段階のうちですと、不正性器出血やおりものの増加といった症状が一部現れる程度です。他の症状はほとんど伴いません。そのため、ある程度進行してから発見され、手遅れになってしまうケースも少なくありません。
治療法は内服での治療法は確立されておらず、手術になります。そのため、ワクチン接種による予防が非常に重要になります。
まずは子宮がん検診を定期的に受けるようにしましょう。子宮頸部異形成の疑いがあると指摘された際は、放置せずに進行を抑える治療・対策を行いましょう。

子宮頸部異形成の分類(CINの分類)

HPVの感染によって細胞異型を起こした細胞の多さに応じて、以下のように分類されます。
子宮頸部上皮内腫瘍(cervical intraepithelial neoplasia : CIN)は、異形成の度合いに応じて軽度異形成(CIN1)、中等度異形成(CIN2)、高度異形成・上皮内がん(CIN3)と分けられます。

子宮頸部軽度異形成(CIN1)

CIN1の60%は、1~2年の間で自然と消えていきます。ただし、CIN1の12~16%はCIN3へ進行します。CIN1は半年毎に細胞診とコルポスコピー検査で経過観察が必要となってきます。ハイリスクHPV検査を行った場合、HPV16型、18型、31型、33型、35型、45型、52型、58型が陽性であれば4ヶ月~6ヶ月毎に細胞診、コルポスコピー検査による経過観察をしていきます。陰性の場合には1年毎に細胞診で経過をみていきます。

子宮頸部中等度異形成(CIN2)

CIN2の40%は、1~2年の間で自然と消えていきます。ただし20%の確率でCIN3へ進行します。CIN2は3~4ヶ月毎に細胞診とコルポスコピー検査を併用して経過観察をしていきます。ハイリスクHPV検査を行った場合、HPV16型、18型、31型、33型、35型、45型、52型、58型が陽性であれば細胞診とコルポスコピー検査による経過観察を継続します。これらのハイリスクHPVに感染していると自然消失の可能性が低く、CIN3へ進展しやすいことが知られています。妊娠女性の場合を除いて、レーザー蒸散術・円錐切除術も適応となります。これらのハイリスクHPVに感染していなければ、半年毎の細胞診による経過観察となります。

子宮頸部高度異形成+上皮内がん(CIN3)

CIN3の20%は、1~2年の間で自然と消えていきます。ただし30%の確率で子宮頸がんへ進行します。

原則的に手術をお勧めします。子宮頸部円錐切除術を選択するケースが多いですが、病変が子宮頸管の深くに及んでいない場合にはLEEPも選択できますし、病変が子宮頸管に及んでいない場合にはレーザー蒸散術も選択することができます。

慶應大学の栗原教授らの報告(1972年)によりますと、CIN3と診断が下された32例を1年以上追跡調査した結果、16%が消え、53%が持続、そして残り31%が、上皮内がん以上の病変へ進展したと報告されています。
CIN3から浸潤がんへ進展する確率は、各研究データによって変わりますが、「CIN3=絶対に浸潤がんへ進展するもの」とは断言できません。
しかし、浸潤がんになった場合は、広汎子宮全摘術(こうはんしきゅうぜんてきしゅつ)と骨盤リンパ節郭清(こつばんりんぱせつかくせい)を行うのが一般的とされています。
大きな治療が必要になる浸潤がんへ至る前に、早期発見と治療に努めていきましょう。

子宮頸部異形成の検査

診察まずは、コルポスコープ(拡大鏡)を用いた組織診(生検)を行います。
腟の中に腟鏡を入れて、薬液(酢酸)で観察しやすい状態にしてから、コルポスコープを使って子宮頸部を観察していきます。
異形成があると疑われる部位は、色調が通常と比べて変化します。この部分から数mmの組織を採取します。
採取した組織は病理検査(顕微鏡を使った検査)に提出します。2週間程度で結果が出るので、そのタイミングで確定診断をお知らせします。
検査にかかる時間は5分程度です。検査後は生検した箇所から血が多く出ることもあります。当院では検査時に止血剤を使用し、タンポンで圧迫止血を行います。もし、出血が多くなるようであれば生検した箇所を電気メスで止血する可能性もあります。出血量が多い場合には我慢せず、早めに当院へご連絡下さい。
これらの検査結果から子宮頸部異形成の進行度合いなどを把握し、患者様一人ひとりに合わせた治療を提案していきます。

子宮頸部異形成の治療

処置室軽度・中等度の異形成でしたら、すぐに手術などを行いません。自然と消える可能性もあるため、いったん様子を見ていきます。そのため多くの医療機関では、軽度・中等度の異形成に対しては、数ヶ月に一度の検査で様子を伺っています。
また高度異形成・上皮内がんなどの場合は、子宮頸部を円錐状に切除する「子宮頸部円錐切除術」を選択します。
軽度・中等度の異形成でしたら、自然と消失するまで、もしくは円錐切除術が必要になる状態まで進行するまで、検査をこまめに受けなくてはなりません。
こまめに受診が必要になると、患者様への負担が大きくなるため、この理由により当院は、「レーザー蒸散術」に対応できるようにしています。これは、高周波電流を起こして発生させたジュール熱を利用した治療法です。ジュール熱により、子宮頸部の病変部位が凝固・壊死できます。その後は、肉芽組織の発生が促進されます。

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