バルトリン腺嚢胞

バルトリン腺とは

検査室

バルトリン腺という言葉はあまり聞き馴染みがないと思います。

バルトリン腺は、非常に小さな丸い腺で、外陰部(性器を含む部位)腟の入口から1~2㎝、斜め奥にある分泌物です。
エンドウ豆大の形をしていて、左右それぞれに一つずつ存在します。
別名、大前提腺だいぜんていせんとも呼ばれます。

バルトリン腺は、性的興奮時に薄い乳白色の粘液を分泌します。

膣分泌液と混ざり、性交時の潤滑じゅんかつさを促進します。
男性でいうと、尿道球腺にょうどうきゅうせん(カウパー腺)に相当します。

バルトリン腺から分泌される液体は、匂いはなく無色透明です。
とろとろとした粘り気があり、空気を含むことにより白濁はくだくします。

甘い味や苦い味がすると言われており、酸っぱい感じはしませんが、体調によって変化すると言われています。

バルトリン腺の袋は、会陰の比較的浅いところに存在していますが、男性のカウパー腺の袋はそれよりも深い位置に存在します。

バルトリン腺嚢胞のうほうとは

バルトリン腺嚢胞は、腺開口部の閉塞により分泌液が貯留し、導管が嚢胞状に拡張したものです。

つまり、分泌液の通過に必要な導管が詰まると、管の中にネバネバした分泌液が溜まります。
それにより液体が溜まり、嚢胞が形成されます。

バルトリン腺嚢胞のほとんどは、バルトリン腺自体が腫れるよりも、分泌物の出てくる導管が腫れることで大きくなったものです。

腟の入り口近くがピンポン球のサイズまで腫れるケースもありますが、痛みを伴わないケースもあります。

導管の詰まりを改善させると、腫れは治まります。
また内容液は、無色でかつ、透明という特徴を持っています

バルトリン腺嚢胞の原因

詰まる原因は未だに分かっていません。確率は低いのですが、性感染症から発症するケースもあります。

バルトリン腺嚢胞の原因は、以下のように考えられています。

バルトリン腺炎により、分泌物の通り道である導管が閉塞することで、導管が拡張してバルトリン腺嚢胞となります。
バルトリン腺炎の多くは排泄管の炎症です。

最も一般的な原因菌は大腸菌や嫌気性菌けんきせいきんです。
他にもブドウ球菌、連鎖球菌、性感染症の原因菌であるクラミジア、淋菌でも起こりえます。

近年ではオーラルセックスによる影響で呼吸器微生物である肺炎球菌やインフルエンザ桿菌かんきんも検出されることがあります。
排泄管開口部が炎症により閉鎖することで、バルトリン腺嚢胞、バルトリン腺膿瘍のうようとなり腫瘤を形成します。

バルトリン腺嚢胞の症状

腟の入口近くがピンポン球ぐらいのサイズまで腫れることがあります。
しかし、多くの場合は痛みが生じません。

外陰部の違和感程度で痛みはなく、バルトリン腺嚢胞が小さい場合には発症に気づかないこともあります。

バルトリン腺嚢胞が大きくなると、歩くときや座っているとき、または性交時に不快感や圧迫感を感じることがあります。

バルトリン腺嚢胞が感染してバルトリン腺膿瘍になると、痛みや腫れ、赤みが生じることがあります。
更にバルトリン腺膿瘍の感染が進行すると、激しい痛みを伴うこともあり、歩くことも困難になります。

このように、最初のバルトリン腺炎の段階、軽症のバルトリン腺嚢胞の段階では気付かない方も多いです。
バルトリン腺膿瘍はバルトリン腺嚢胞の3倍の患者数と言われていますので、バルトリン腺嚢胞の段階で受診する女性は少ないようです。

バルトリン腺の治療法

内服

バルトリン腺の治療法は一概ではなく、嚢胞の大きさ、感染して膿瘍になっているか、など病状や症状により治療方法は異なります。

方法としては、抗生剤による保存的な治療、バルトリン腺嚢胞・膿瘍への穿刺せんし、切開排液・排膿、造袋術ぞうたいじゅつ(開窓術かいそうじゅつ)、嚢胞摘出術があります。

バルトリン腺嚢胞が小さく、無症状で患者様が処置をご希望されない場合には経過観察ですが、症状がある場合には治療をします。

治療内容

  • 穿刺、切開による排液・排膿
  • 排膿・細菌培養検査・抗生物質の内服

排膿した内用液で細菌培養検査を行う場合です。
細菌感染の可能性もあるため、検査し、抗生物質を服用します。

バルトリン腺を穿刺する場合には18G(外径1.2mm)の針を使用して液体を吸引します。

手術

  • バルトリン腺膿瘍切開術は、メスを使用して切開排膿する手術です。
  • バルトリン腺嚢胞造袋術ぞうたいじゅつは、病変部を切開し嚢胞の端を反転させ、切開部の表皮に縫合する手術です。
  • バルトリン腺嚢胞摘出術は、嚢腫壁のうしゅへきをそのまま摘出する手術です。

手術と聞くと、大掛かりな手術を想像するかもしれませんが、当院では日帰りでバルトリン腺膿瘍切開術とバルトリン腺嚢胞造袋術のみ手術を行っています。

麻酔は局所麻酔下で手術が可能ですが、当院では痛みに弱い方や、痛みが不安な方は静脈麻酔を使用することもできます。

治療後の経過

手術をせずに穿刺や切開排膿で症状が改善した場合でも、再発する可能性があります。

通常はこの治療法で良くなるのですが、15%の方が再発すると言われています。

再発を繰り返す方は、根本的な治療が必要となるため、バルトリン腺嚢胞造袋術、あるいは、摘出術を行います。

バルトリン腺の自壊

自壊とは

バルトリン腺嚢胞と検索すると「バルトリン腺嚢胞 自壊」と出てきます。

自壊とは漢字の通り「自ら壊れる」です。

バルトリン腺がピンポン玉サイズに腫れても、病院には行かずそのまま自壊を待つ方も多いようです。

勝手に壊れて膿が出てくれたら病院で痛い思いもしなくて済む!高いお金を払わなくて済む!と思うところではありますが、実際どれぐらいで自壊するのか、自壊したらどうなるのか、自壊したら終了で良いのかをご説明します。

自壊までの時間

文字通り「自ら壊れる」のが自壊のため、自壊がいつになるのかは誰にもわかりません。

数日~数週間かかります。
なんと中には1カ月以上かかったという方もいらっしゃいます。
市販の漢方薬で自壊の治療をする方もいます。

いざ自壊

ピンポン玉のサイズまでパンパンに膨れ上がり、膿が突然排出されます。

突然の自壊に備え、生理用ナプキンは必須です。
自壊する直前まで激しい痛みに襲われますが、自壊直後から痛みが急になくなります。
いつ自壊の場面に遭遇するのかわからないため、自壊するまでは旅行や外出は難しそうですね。

また、バルトリン腺嚢胞を安全ピンなどを使用して、自分で自壊させようとする方もいらっしゃいますが、かえって感染を助長したり、失敗することも多いため控えるようにしてください。

自壊後

自壊した後は数日間にわたり、膿が排出されます。膿が排出する出口があるため、そこから細菌が入り、感染症にかかる可能性があります。

自壊しても再発する可能性はあります。

もし万が一自壊してしまい、病院に受診できない場合は、抗生剤入りの外用薬を薬局で購入しましょう。
破裂部位は清潔に保つことが必要となります。

症状がある時の性行為

痛みが強い時は、性行為をする気持ちになれないとは思いますが、バルトリン腺嚢胞が形成されている時に何らかの性的な行為をした場合には、バルトリン腺嚢胞に細菌感染しやすい状態になり、今度はバルトリン腺膿瘍を形成する可能性もあります。

バルトリン腺嚢胞ができている場合には、性行為は避けてください。

処置や手術を行った方も、性行為により穿刺や切開傷へ細菌感染の危険があがります。
医師の許可が下りるまでは必ず性行為を控えてください。

バルトリン腺嚢胞の予防

バルトリン腺嚢胞を完全に防ぐ方法はありませんが、普段の日常生活で気を付けることでバルトリン腺炎にならないようにすることはできます。

膣内や外陰部を清潔に保つために、排尿・排便後は前から後ろに向かって拭くようにしましょう。

生理用のナプキンや、おりものシートはこまめに取り換えてください。 清潔な習慣を保つことにより、バルトリン腺嚢胞だけではなく、細菌の侵入を防ぐためかゆみなどの症状も予防することができます。

最後に

バルトリン腺は早めに治療をすることをおすすめします。

穿刺や排膿はすぐに処置が終わります。
手術は穿刺や排膿に比べると時間はかかりますが、当日の手術も可能です。

ご希望があれば、お食事の制限などがございますが、静脈麻酔を使用することも可能です。

24時間サポートチャットでメッセージ送信できますので、ご不明点などお気軽にお問い合わせください。

検査と治療にかかる費用の目安

内容 料金
初診料 890円
再診料 380円
抗生剤 500円
膿の穿刺・排膿 240円
培養検査 1,360円
切開・検査 4,300円
造袋術・検査 12,000円
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