子宮頸がんとは
「子宮頸部」は、子宮の出口にある、筒状の部分のことです。子宮頸がんとは、ここにがんが生じるがん疾患です。観察・検査しやすいがんですので、早めに見つかると治療がスムーズに進みやすくなるので、良い結果を得られやすくなります。ただし悪化すると治療が困難になるので、早期発見に努めることが重要です。
子宮頸がんの発症リスクを高める要素としては、喫煙、そして性行為を介して感染するヒトパピローマウイルス(HPV:Human Papillomavirus)の感染が挙げられます。
実際に、90%以上の子宮頚がんの患者様からHPVが見つけ出されたと報告されています。
子宮頸がんの原因
子宮頸がんのほとんどは、ヒトパピローマウイルス(HPV:Human Papilloma Virus)の感染によって起こると判明されるようになりました。これは、性交渉の経験のある方でしたら、誰でも感染しうるウイルスです。とはいえ、ほとんどの健康な方でしたら、ご自身の免疫力でウイルスを排除できます。
しかし感染した方の約10%の方は、感染が長引いてしまい、がんの前の段階である「子宮頸部異形成」に至ってしまうのです。
さらに、その中の一部の方が、高度異形成を経て子宮頸がんに移行するとされています。
子宮頸がんの早期発見
正常ではない異型細胞による、「異形成」と呼ばれる前がん病変からがんへ移行します。
そのため早期発見するには、細胞診(さいぼうしん)で異形細胞を見つけだす必要があるのです。早めに見つけ出せば、普段の生活や仕事に悪影響を及さずに、完治できる可能性も上がります。
症状がなくても、定期的に検診を受けに行きましょう。
検査内容
まずは問診で、初潮を迎えた年齢、生理の期間やその状態、妊娠・出産経験や自覚症状があるかどうかなどをお伺いします。
その次に内診で、腟鏡を使って子宮頸部をしっかり観察し、状態をチェックしていきます。子宮の形・大きさ、状態、位置、炎症などがないかも確かめる可能性もあります。
次に、柔らかい器具を使って子宮頸部の粘膜を優しく擦り、細胞を採るPAPテストへ移ります。採った細胞は顕微鏡で調べます。採取する際、確率は低いのですが、出血を起こす可能性があります。痛みはほとんど伴いませんので、ご安心ください。
細胞診の結果も含めた検査結果は、2週間後に報告できます。
また、必要に応じて、より精密な頸部の観察が行える「コルポスコピー検査」も実施します。これはコルポスコープという、広い視野を確保して頸部を細かく観察できる顕微鏡を用いて行う検査です。子宮頸部病変の度合いと範囲を調べるために、組織を採る生検も実施します。
子宮頸がんワクチン
当院では子宮頸がんの発症予防に向けてHPVワクチン接種を推奨しています。
子宮頸がんワクチンは子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)の感染を予防するワクチンです。HPVには200種以上の遺伝子型が存在しています。
子宮頸がんを発症するタイプで多いのはHPV16型が半数を占め、次にHPV18型が20%程度を占めます。
HPV16型が検出された場合には、HPVが検出されない場合の子宮頸がんが発症するオッズ比は435倍、HPV18型が検出された場合には248倍になるという報告もあります。
20代の日本人女性の子宮頸がんではHPV16、18型が90%を超えるというデータもあります。
子宮頸がんをHPV感染により起こしやすい理由の一つがSCJ(扁平円柱上皮境界)の存在が挙げられます。
SCJには扁平上皮と円柱上皮への分化をする幹細胞であるリザーブ細胞があります。
この細胞にHPVが好んで感染します。この幹細胞がHPV持続感染によりがん幹細胞の性質を獲得すると子宮頸がんへ進展していくこととなります。
子宮頸がんワクチンにより、HPV感染自体を中和抗体によって予防でき、子宮頸がんの発症リスクを減少させることができます。
子宮頸がんワクチンの安全性
欧州医薬品局の発表では、HPVワクチンが複合性局所疼痛症候群や体位性頻脈症候群の原因となることはないとされています。
また、米国疾病予防管理センターは、HPVワクチンの安全性は複数の研究により科学的に証明されており、ワクチン有害事象報告システムでも安全性に関する深刻な懸念は確認されていないとしています。
日本国内の安全性調査でもHPVワクチン接種の接種歴がない者も、接種後に報告されている症状と同様の多様な症状を呈するものが一定数存在したと報告しています。
頻度の高い副反応としては、注射部位の疼痛、腫脹があります。
また、ワクチンの種類に関係なく、ワクチン接種による急性ストレス反応として不安感、過呼吸、心拍数上昇、血管迷走神経反射によるめまいや失神などの可能性はあります。
子宮頸がんワクチンの有効性
2020年にスウェーデンで4価ワクチンの有効性についての報告がされました。
10〜30歳の女性、約167万人を対象にした長期間の追跡調査では、17歳未満でワクチン接種をすると子宮頸がんの発症率を88%も減少し、17歳〜30歳で接種を受けた女性でも53%の子宮頸がんの減少効果が認められました。
また、フランスの臨床研究では9価のHPVワクチンでは子宮頸がんに対して85〜92%の効果が認められるとの報告もされました。
当院で取り扱う子宮頸がんワクチン
当院ではシルガード(9価)を取り扱っています。
筋肉注射での接種になります。初回接種から2ヶ月後、6ヶ月後の3回の接種をします。
ワクチン接種は予約制になりますので、ご了承ください。公費での子宮頸がんワクチン接種も行っていますので、渋谷区に住民票がある方で対象になる方は無償で受けることができます。
ワクチンについて医師にご相談がある方は、婦人科外来を受診してください。