低用量ピルといえば、避妊やPMS(月経前症候群)の改善目的で使用されている薬です。
しかし、すべての人が使用できるわけではありません。
どの薬にも共通していえることですが、体質や持病、生活習慣によっては服用が適さない場合があります。
そこで、本記事では低用量ピルが飲めない人について解説します。
この記事を読むことでどのような人が服用に向いていないのか、医師にはどういったことを相談すればよいのかなどがわかるようになるので、ぜひご覧ください。
低用量ピルとは?
低用量ピルは、女性ホルモンであるエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)が含まれている錠剤です。
1シート21錠または28錠となっており、21錠タイプは21日連続で服用した後に7日間休薬します。
28錠タイプは、ピル成分を含まない7錠の偽薬(プラセボ)を休薬期間中に飲むことで、日数を間違えにくい点が特徴となります。
ピルにはいくつか種類があり、低用量ピルとは、ピルに含まれている女性ホルモンのエストロゲンの量が50μg未満のものをいいます。
このほかに超低用量が20μg以下、中用量は50μg、高用量は50μg以上に分類されます。
高用量ピルは血栓症のリスクが高いため、現在は使用されていません。
中用量ピルは効果が高いものの、副作用も高いことから長期使用には向いていない種類です。
そのため、一般的に使用されているのが低用量ピルということになります。
目的
ピルを飲む目的は、主に避妊とPMSや月経トラブルの改善です。
それぞれ解説します。
避妊
避妊を目的としてピルを使用する場合、その効果は非常に高く、飲み忘れることなく正しく使用した場合は99.7%の避妊効果があるとされています(※)。
低用量ピルには女性ホルモンが含まれており、服用することでホルモンの調節機構の抑制が可能です。
すると、卵胞発育や排卵が起こらなくなることで妊娠を防ぎます。
飲み始めるタイミングによって効果が現れる日が変わり、月経1日目から飲み始めた場合はその日から効果があります。
その他のタイミングで服用し始めた場合は、継続して7日間低用量ピルを飲まなければ避妊効果が得られないため、注意が必要です。
低用量ピルには女性ホルモンが含まれていない偽薬を飲んだり、ピルを飲まなかったりする期間がありますが、正しく服用を続けている場合はこの休薬期間中も避妊効果が継続します。
(※)
参考:(PDF)日本産科婦人科学会:低用量経口避妊薬の使用に関するガイドライン(改訂版)[PDF]
PMSや月経トラブルの改善
月経前に頭痛・むくみなど身体的なトラブルや、気分の落ち込み・イライラなど精神的なトラブルが発生するのが、PMS(月経前症候群)です。
月経には、ほかにもさまざまなトラブルが伴うことがありますが、低用量ピルはPMSや月経に伴う症状の緩和を目的として処方されることもあります。
低用量ピルを飲めない人の特徴とは?
避妊やPMS改善に用いられる低用量ピルですが、すべての人に適しているわけではありません。
特に注意しなければならないのは、血栓症を発症するリスクが高い方や、重い持病のある方です。
低用量ピルの最も大きなリスクは血栓症だとされています。
血栓症とは血液中に血栓と呼ばれる血の塊ができ、それが血管をふさぐことで起こる疾患のことをいいます。
血栓のリスクを高めるのは、低用量ピルに含まれている女性ホルモンのうち、エストロゲン(卵胞ホルモン)です。
低用量ピル自体が血栓症のリスクを高めるうえ、喫煙の影響でさらにリスクが上昇します。
そのため、35歳以上で1日に15本以上タバコを吸う方は一般的に低用量ピルの処方が避けられます。
このほかに、血管障害発生の危険因子として、以下が挙げられます。
【血管障害発生の危険因子】
- 血栓症や血管障害の既往症
- 高血圧
- 糖尿病などの代謝性疾患
- 40歳以上の高年齢
- リウマチ性心疾患
参考:公益社団法人日本産婦人科医会:第1章 低用量経口避妊薬(OC)とは (一般的有効性及び安全性)
低用量ピルを飲めない条件は、体質や既往歴によって大きく異なります。
そのほか、副作用のリスクが高い人も服用できません。
自己判断せず、医師に相談して適切な判断を受けることが大切です。
低用量ピルを飲めない人はどうしたらいい?
何らかの理由によって低用量ピルを飲めないと医師が判断することもあります。
この場合、低用量ピルは処方されないことになるので、対策を講じなければなりません。
ここでは、生活習慣が原因で飲めない場合と、一時的な副作用が原因で飲めない場合、それぞれの対処法を解説します。
生活習慣が原因で飲めない場合
現在の生活習慣に問題があるため、ピルの処方が認められないことがあります。
たとえば、紹介したように喫煙習慣がある人は、喫煙本数を減らしましょう。
可能であれば禁煙を目指したいところです。
一時的にやめればよいというものではなく、ピルを服用している期間中は本数を抑えたり、禁煙に取り組んだりする必要があります。
また、肥満の方も血栓症などの心血管系障害が発生しやすくなることから、状態によってはピルが処方されません。
基準となるのは、身長と体重から算出するBMI(Body Mass Index)と呼ばれる体格指数です。
「BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)」で計算できます。
たとえば、身長が160cm、体重が60kgの方であれば「60÷1.6÷1.6=23.4」でBMIは23.4です。
日本肥満学会の分類では、BMI18.5~25が普通体重、25~30が肥満1度、30~35が肥満2度となっています(※)。
このことから、BMIが30を超えている方はピルの処方が認められない可能性があるので、ダイエットに取り組みましょう。
食生活の改善や適度な運動などを実施してBMIを改善できた場合、将来的にはピルを使用できる可能性があります。
一時的な副作用が原因で飲めない場合
特に低用量ピルを飲み始めたばかりの頃は、吐き気やめまい、体重増加、頭痛などの副作用が強く現れることがあります。
こういった一時的な副作用が原因で飲めない場合は、体が慣れるまでしばらく待つ形を取るのが一般的です。
しかし、数週間経っても副作用が治まらず悪化するような場合はピルの服用中止や、種類の変更などが必要となります。
低用量ピルが飲めない場合の代替策
何らかの理由により低用量ピルが飲めない場合、代替案について検討していきましょう。
どの代替策を選択するかは、ピルの処方目的が避妊なのか、PMSや月経トラブル対策なのかによって異なります。
以下でそれぞれ解説します。
避妊目的の代替策
避妊目的でピルを飲もうと考えていたものの適さないことがわかった場合は、その他の方法で避妊を行っていくことになります。
たとえば何らかの理由があり、低用量ピルでは血栓症のリスクが高いと判断された場合は、黄体ホルモン(プロゲステロン)のみを含むミニピルも選択肢の一つです。
エストロゲンを含んでいないことから低用量ピルと比較すると血栓症リスクを抑えられます。
また、今後妊娠を希望することがない場合は子宮内に装着する避妊器具である「ミレーナ(避妊リング)」を検討してみるのもよいでしょう。
挿入後は少量ずつ黄体ホルモンが放出され、約5年間にわたって避妊効果を得られます。
ホルモン剤を使用しない方法を選択したい場合は、コンドームも代表的な避妊法の一つです。
ただし、破損リスクには注意しなければなりません。
また、ピルとホルモン剤は成分がほとんど変わらないため、ホルモン剤で代用しようと考える方もいるでしょう。
しかし、含まれているホルモン量が異なることから、ホルモン剤を使用しても避妊できない可能性があります。
自分に適した方法がわからない場合は医師に相談することをおすすめします。
PMSや月経トラブル対策の代替策
PMSや月経トラブルを緩和させたいのであれば、低用量ピルのほかにもいくつかの選択肢があります。
たとえば、漢方薬や利尿薬でむくみや気分の落ち込みを緩和させたり、月経痛を抑えるために鎮痛剤を服用したりするなどの方法です。
アロマセラピーや運動習慣の導入が補助的な手段として取り入れられる場合もあります。
さまざまな選択肢があるので、症状と目的に合わせて選択することが重要です。
医師に相談してみましょう。
低用量ピルを使いたいときに医師に相談すべきこと
低用量ピルの使用を検討しているのであれば、医師に相談のうえで勧めていくことになります。
相談時にどのような情報をそろえておけばよいのか確認しておきましょう。
持病・既往歴
持病や既往歴については、確実に医師へ伝えておきましょう。
たとえば、心臓や血管の病気、高血圧、糖尿病、乳がん、子宮がんなどにかかったことがある場合、ピルの使用が可能かどうかは慎重に判断する必要があります。
これは、血栓症のリスクが高まってしまい、危険なためです。
持病や既往歴を正しく申告することが重要です。
虚偽の申告は健康被害につながる可能性があります。
生活習慣
生活習慣によっても低用量ピルの服用が適さないことがあります。
紹介したように、35歳以上で1日に15本以上のタバコを吸っている方や、肥満の状態にある方は注意が必要です。
医師は現在の状態や生活習慣を参考にしながら総合的にピルの使用が可能か判断します。
生活習慣を偽ると本来であればピルの使用が適していない人でも処方を受けられる場合があり、健康面でのリスクにつながるため、注意しなければなりません。
現在服用中の薬やサプリ
現在使用している薬や、サプリメントの種類によっては、低用量ピルを服用できない場合があります。
服用している薬・サプリメントは正しく伝えましょう。
よくあるのが、自己判断で「大丈夫」「ピルの処方とは関係ない」と判断し、医師に伝えないケースです。
自分では全く関係ないと思っている薬や成分がピルの効果を強めたり弱めたりして本来期待している効果が得られなくなることも少なくありません。
きちんと医師に伝えることが大切です。
低用量ピルが飲めるかどうかは医師の判断によっても異なる
いかがでしたでしょうか?
今回の記事では、低用量ピルが飲めない人の特徴や、飲めない場合の対策などについて紹介しました。
医師に相談したい内容についてもご理解いただけたはずです。
低用量ピルを服用できるかどうかは、医師の判断によって決まります。
Ladies clinic LOG 原宿では、複数種類のピルやミレーナ(避妊リング)も取り扱っています。治療方法の選択については医師にご相談ください。