女性のデリケートゾーンにはさまざまな悩みがみられます。なかでも、「バルトリン腺嚢胞」と呼ばれるトラブルは、20〜40代の方に多くみられます。
バルトリン腺嚢胞は、小さなできものが大きく腫れて、しこりのようになる疾患です。外陰部や膣に潤いを与えるための器官が、何らかの理由で詰まってしまった場合に発生します。
この記事では、バルトリン腺嚢胞の特徴と発症原因を中心に、放置した際の症状や検査方法を取り上げています。外陰部のできものが気になる方や、対処方法をチェックしたい方はぜひ参考にしてください。
バルトリン腺嚢胞とは
バルトリン腺とは、腟の入口の左右に存在する分泌腺です。分泌腺からは分泌液が出て、外陰部や膣内を潤しています。しかし、何らかの原因で腺の出口が詰まることで、内部に分泌液が溜まった状態となり袋状に大きくなります。これがバルトリン腺嚢胞と呼ばれるものです。
バルトリン腺は左右に一対ずつ存在しますが、多くの嚢胞は片側にのみ現れ、数mm〜数cm(大きいもの)に成長します。嚢胞が細菌に感染すると炎症を起こし、「バルトリン腺膿瘍(のうよう)」となります。
嚢胞が発生する原因ははっきりとは解明されていませんが、外傷・細菌感染・圧迫・摩擦などさまざまな刺激が元になると考えられています。陰部を清潔にしていない場合や、掻きこすって傷がつくようなケースも嚢胞のリスクを高める可能性があります。
細菌感染については、外陰部の常在菌である大腸菌やブドウ球菌がかかわるおそれが高く、一方で性感染症(淋菌など)が感染源になるケースもみられます。いずれの場合も、細菌感染によって患部は腫れ、赤みや激しい痛みがみられるため、早期対処が重要です。
女性の外陰部は椅子に座ったときの圧迫や歩行時の摩擦など、さまざまな刺激が加わります。バルトリン腺嚢胞ができてしまったら、それらの刺激によって痛みが悪化するおそれもあります。
バルトリン腺嚢胞を発症する原因
バルトリン腺嚢胞を発症する原因には、細菌感染・分泌物の蓄積・ホルモンバランスの変化が挙げられます。それぞれの原因について詳しくみていきましょう。
細菌感染と炎症
バルトリン腺嚢胞の発症原因に、細菌感染による導管の炎症と閉塞が挙げられます。バルトリン腺は外陰部や膣を守るために潤滑液を分泌しますが、蒸れやその他の原因で細菌が繁殖すると、感染のリスクが高まります。
特に性感染症や陰部の常在菌が導管に感染すると、免疫反応によって炎症が起き、腺の出口が塞がって分泌物が滞留します。嚢胞になった状態のまま感染が悪化すると、嚢胞内に膿が溜まり、やがて膿瘍へと進行することがあります。
炎症に対処せず放置していると、次第に激しい痛みや熱感が現れ、全身症状に進行することもあります。性行為を通じた細菌感染はリスクが高いため、普段から意識的に感染を予防することが重要です。
粘稠化した分泌物の蓄積
バルトリン腺から分泌される粘液は液状をしていますが、通常よりも粘稠化(ねんちゅうか)すると排出されにくくなり、導管の中で詰まりを引き起こします。
細菌に感染していなくても、分泌物が腺内に留まるだけで嚢胞が形成されるため、粘稠化を予防するために良質な水分を摂取し、全身の循環を良くして、規則正しい生活でストレスを溜めないように注意しましょう。
ただし、食生活や生活習慣が整っていても、体質的に分泌物が粘りやすいケースもあります。分泌物の状態はホルモンバランスや心身の状態からも影響を受けるため、粘り気の強い分泌物が出ているときは陰部を清潔にし、こまめに洗浄を行いましょう。
ホルモンバランスの変化
女性ホルモン「エストロゲン」と「プロゲステロン」はそれぞれ異なる役割をもっており、エストロゲンの分泌が盛んになると、バルトリン腺の活動も活発になります。
具体的には排卵期や妊娠初期が該当し、この時期にかかると分泌物の量が増えて、導管がスムーズに排出できなくなり嚢胞を形成しやすくなります。ただし、エストロゲンが体内から減っていく更年期以降は、分泌物の量も減少するため、バルトリン腺の活動が徐々に低減する可能性もあります。
ホルモンバランスは睡眠不足や過度なストレス・ダイエットなどによって悪化しやすく、バルトリン腺の排出機能が妨げられると嚢胞の形成リスクが高まります。ホルモンバランスの変化に由来する嚢胞は生理周期ごとに再発するリスクがあるため、婦人科での相談や診察を検討しましょう。
バルトリン腺嚢胞をほっとくとどうなる?
バルトリン腺嚢胞をそのままにしていると、どのような症状が現れるのでしょうか。外陰部の腫れや歩行困難などのトラブルをチェックしましょう。
外陰部の腫れや違和感
バルトリン腺嚢胞を放置すると、分泌物が溜まったまま腫れが大きくなり、しこりのようなできものが目に入ってしまう、下着と患部がこすれて不快感や痛みを覚えることがあります。腫れは陰部の片側に限られますが、座ったり下着を着けたりするなかで圧迫やこすれが発生すると、そのたびに痛みや不快感を覚えます。
痛みを伴わない無症状の嚢胞でも、放置していると徐々にサイズが大きくなり、違和感へと繋がるおそれがあります。陰部はデリケートな場所のため、ささいなトラブルでも生活の質や集中力に悪影響を及ぼす可能性があります。腫れや違和感は放置せず、早期に対処することが大切です。
歩行困難
嚢胞が進んでサイズが大きくなると、腫れが直接下着や皮膚に当たってこすれるため、歩行時に痛みや違和感が生まれます。
炎症や感染を伴うものはさらに痛みが強まるため、歩行自体が困難になることもあります。長時間の立ち歩き、階段の昇降が大幅に制限されるおそれもあります。
性交痛
バルトリン腺嚢胞は膣の近くにあるため、性行為の際に痛みを感じやすくなります。嚢胞が何らかの刺激を受けると痛みが走り、不快感やヒリヒリとした痛みの残存が伴います。不快感と同時に、パートナーとの関係に支障をきたすことも特徴です。
「性交時にまた痛むのではないか」「指などで触れて感染症にかかるのではないか」といった恐怖心からパートナーとの性行為への不信感にも繋がりかねないため、早めの治療が重要です。
自然破裂
嚢胞を放置していると、分泌物が溜まっていき嚢胞が皮膚を圧迫して、突然破裂することがあります。
自然破裂は一時的に腫れが軽減したように見えますが、破裂した部位は新たな感染のリスクがあるため、患部を清潔にしなければなりません。嚢胞の一部が残ると、再発するおそれがあります。
バルトリン腺嚢胞の検査
無症状のあいだは症状がなく、通常通り生活が送れるため、バルトリン腺嚢胞と気づきにくいものです。
しかし嚢胞が大きくなってくると、排泄や入浴の際に気づいたり、性行為によってパートナーに指摘されたりと、視覚的な変化から病院を受診するきっかけが生まれることもあります。
検査では医師が問診を行い、症状の有無・程度・経過・既往歴をみます。次に内診を行い、視診と触診で嚢胞の状態や感染の有無を確認します。分泌物の状態や膿の採取から性感染症の有無を調べます。
痛みや違和感、嚢胞が大きくなっておらずほぼ症状がないような場合には、特別な治療は行わず経過観察になることがあります。そのまま様子をみて自然治癒を待つケースです。
嚢胞が大きく、日常生活に影響が出ている場合は、内部から膿を取り出す排膿処置がとられます。激しい痛みで日常生活が困難になっている、感染症にかかっており放置できない状態については、症状の進行と再発防止のため、嚢胞やバルトリン腺の摘出手術を検討します。
バルトリン腺嚢胞は自然治癒する?
バルトリン腺嚢胞はすぐに大きくなるものではなく、放置によって自然治癒が期待できるケースもあります。大きくなった嚢胞が自然に破裂すると、内部の粘液とともに膿が排膿され、患部の痛みや不快感が軽減します。
粘液や膿が流出すると一時的に痛みが緩和し、そのまま完治する場合もありますが、排膿が不十分だったり感染症にかかったりしているときは完治せず、しばらくしてから症状が増悪・再発するため注意が必要です。
バルトリン腺嚢胞は放置せず早期に病院へ
この記事では、バルトリン腺嚢胞の特徴や発症原因、検査方法と自然治癒の可能性について紹介しました。
バルトリン腺は唾液腺のように元から体内に存在する器官で、通常であれば症状はなく、大きな腫れもありません。しかし、何らかの原因で内部に分泌物が溜まると、そこだけが大きく腫れて痛みや不快感を引き起こします。
嚢胞が見つかったときは、症状が悪化しないうちに医療機関を受診し、必要な治療を受けるようにしましょう。激しい痛みは細菌感染のおそれもあります。原因を特定のうえ抗生物質を服用し、早期対処を心がけましょう。
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