ディナゲストは、子宮内膜症や子宮腺筋症、月経困難症など心身の健康に影響を及ぼす症状への治療薬として知られています。
0.5mgと1mgの2種類があり、症状や服用する方の体調に応じて処方されます。
この記事では、ディナゲストの特徴、0.5mgと1mgの違い、服用方法や副作用について解説します。
医薬品の効果を引き出し、症状を緩和するためには、薬剤の特徴を押さえて適切な使い方を理解することが重要です。ディナゲストのメリットについても取り上げていますので、ぜひ参考にしてください。
■関連ページ
ディナゲスト(ジエノゲスト)とは
ディナゲスト(ジエノゲスト)は、子宮内膜症や子宮腺筋症のほか、月経困難症や過多月経の治療に使用される黄体ホルモン製剤です。
ディナゲストはホルモンの含有量に応じて0.5mgと1mgの2種類があり、医師の判断のもと処方されます。2つの製剤にどのような特徴や違いがあるのか、詳しくみていきましょう。
0.5mgの特徴
ディナゲスト0.5mgは、月経困難症の治療に使用されることが多い薬です。
子宮内膜症や子宮腺筋症の有無にかかわらず効果を発揮しますが、ホルモンの含有量が少ないため、1mgよりも使用しやすいという特徴があります。0.5mgを服用する場合は、1日に2回0.5mgずつ、合計1mgを服用します。
0.5mgは1mgよりも子宮内膜組織の増殖抑制や卵巣機能抑制作用が穏やかなため、子宮内膜症のような症状への治療効果は緩やかになります。一方、月経困難症の改善効果は1mgと同等です。
個人差がありますが、10代の方や更年期の方でも重篤な副作用が起こりにくいとされ、低用量ピルが合わなかった方にも適しています。副作用が心配な場合は、医師に相談しながら適切な用量を決定してください。
1mgの特徴
ディナゲスト1mgは、子宮内膜症・子宮腺筋症にともなう疼痛を改善する薬です。
0.5mgよりもホルモンの含有量が多いため、子宮の病気やトラブルに対して効果を発揮しやすく、0.5mgよりも内膜組織の増殖や卵巣機能を抑制します。
子宮内膜症・子宮腺筋症の症状がある方で、0.5mgでは治療が十分にできない場合は1mgが処方されます。ただし症状や検査の結果を含めて検討し、0.5mgのほうが適していると判断されることもあります。
1mgは0.5mgよりもエストロゲンの分泌を低下させるため、低エストロゲン症状が副作用として表れる場合があります。ほてりや頭痛、浮動性のめまいがみられるときは使用を中止し、医師や薬剤師と相談して他の薬や治療法に変更するといった方法を検討してください。
1mgと0.5mgを使い分ける基準
1mgと0.5mgを使い分ける基準は次のとおりです。
【使い分ける基準】
- 症状
- 検査結果
- 診察
- 体調
子宮内膜症・子宮腺筋症の症状があり、0.5mgでは十分な効果が得られないと判断されたときは1mgを服用します。その際、問診・既往症・血栓症リスク・検査結果・診察を踏まえて、用量や薬の組み合わせを決めます。
1mgまたは0.5mgを服用中の方で、治療の経過や副作用の状況が判明している場合には、切り替えを行うことがあります。副作用の吐き気や貧血が少なければ0.5mgから1mgへ増量し、反対に副作用が気になる場合は1mgから0.5mgへ減量します。
ディナゲスト(ジエノゲスト)の服用方法
ディナゲスト(ジエノゲスト)は、2種類とも1日2回服薬します。月経が始まってから2〜5日目に服用を開始しますが、これは妊娠していないことを確定させてから服薬しなければならないためです。(※)
服用の間隔は12時間ごとが推奨されています。朝と夜1錠ずつ同じ時間に飲むように習慣化するか、時間がずれないようにピルカレンダーやアプリを使ってチェックする方法もあります。
飲み忘れた場合は、気づいた時点で服用してください。ただし、日付をまたいでしまったときは1錠分を飛ばし、翌日に普段どおりのサイクルで服用を行ってください。
※妊娠中の方、妊娠の可能性がある方はディナゲストを服用できません。処方されてから月経が始まるのを必ず確認してから経口摂取してください。
ディナゲスト(ジエノゲスト)の主要な副作用
ディナゲスト(ジエノゲスト)の主な副作用には、不正出血、貧血、アナフィラキシーがあります。これらの症状に伴い、ふらつきや頭痛、吐き気が生じることもあります。
不正出血はディナゲストの副作用の中でも特に多くみられ、1mgでは88.3%、0.5mgでは93.8%の確率で発生すると報告されています。(※)
不正出血によって重度の貧血につながるケースも考えられます。月経以外のタイミングで出血があったときは、早めに検査や診察を受け、薬の変更や治療方法の見直しを行ってください。
服用開始後しばらくは、出血が続く可能性があります。一度に大量の不正出血があるときや、大量の不正出血が長く続いたときはすぐに服用を中止し、かかりつけの病院へ相談してください。
※参照元:一般社団法人日本医薬情報センター(JAPIC)「ジエノゲスト」
不正出血以外の副作用
不正出血以外の副作用として、ほてり・めまい・動悸・息切れ・消化器系の症状(悪心・嘔吐感・胃部不快感・腹痛など)や精神症状(不眠・不安・抑うつなど)がみられる場合があります。
ただし、薬を服用したすべての人に副作用が表れるわけではありません。体質に薬が合わないケースや、他に服用している薬との飲み合わせが悪い、用量が多すぎるといった問題で副作用が発生したときは、医師や薬剤師に相談してください。
不正出血やその他の症状がみられたときは、早めに相談しましょう。定期検診の際に症状について確認することもできます。「副作用ではなさそうだ」と自己判断せず、薬を飲み続けて体調に変化がみられたときは医師の診察と指示を受けてください。
ディナゲスト(ジエノゲスト)のメリット
ディナゲスト(ジエノゲスト)は、ピルが服用できない方でも使える可能性があり、PMSによる不調の軽減が期待できる点などのメリットがあります。
ここからは、それぞれのメリットを詳しくみていきましょう。
偽閉経療法よりも作用が緩やか
偽閉経療法とは、女性ホルモンの分泌量を減らして閉経に近い状態にする方法です。
子宮筋腫や子宮内膜症は、月経が起こることで症状が悪化するため、閉経に近づけることで病変部が縮小し、症状が緩和されます。
この治療では注射剤や点鼻薬が用いられていますが、擬似的に閉経に近づけるため乾燥肌や頭重感、ほてりといった更年期の症状が発現しやすくなります。
一方、ディナゲストは卵巣に作用しますが、月経を完全に止めるわけではなく、作用が緩やかで体への負担が少ない薬です。
血栓症のリスクが低い
避妊や月経痛の治療に使われている低用量ピルは、体質に合わせてさまざまな種類から選べる薬です。
しかし、ピルを服用できるのは健康で35〜40歳以下の非喫煙者に限られ、血栓症のリスクがある方も服用を避けなくてはなりません。
ディナゲストは避妊に用いることはできませんが、血栓症の心配が少ないため、低用量ピルを服用できない方の選択肢の一つになります。
副作用の発現率が低い
ディナゲストは不正出血のリスクがあるものの、強い副作用が発生する確率は低いとされています。
1mgよりも月経困難症に用いられる0.5mgのほうが副作用が発生する確率は低いため、初めて飲む場合は0.5mgからスタートし、状況に応じて医師と相談し、1mgに切り替えることができます。
ピルが服用できない方でも使える可能性がある
低用量ピルは血栓症のおそれがある方、産後6ヶ月以内の方、エストロゲンによる疾患をお持ちの方は服用できません。
未成年者を含め、初経がまだ訪れていない方や閉経後の方、前兆現象をともなう偏頭痛がある方も服用を見送る必要がありますが、ディナゲストはそのような方が代替薬として服用できる薬です。
1mgは0.5mgよりも効果が強いため、まずは0.5mgから開始することが一般的ですが、必ず医師の指示に従ってください。10代の方については、骨密度の減少リスクを考慮しなければならないため、医師とよく相談して服用してください。
生理が止まり、子宮内膜症の症状を軽減する
ディナゲストは卵巣のはたらきを抑制し、排卵を抑える作用があります。通常の生理がやってこないため、卵巣や子宮が休まり、子宮内膜症や月経困難症の症状を緩和します。
ただし、不正出血の量が生理と同等やそれ以上の場合には、かかりつけ医と相談のうえ投薬や検査を行い、対策をとる必要があります。
生理だけでなくPMSによる不調も軽減される
PMS(月経前症候群)は、月経の前に現れる体調不良や不調の総称です。
月経の前に発生する胸の張り・頭痛・めまい・気分の変動症状などを指しますが、ディナゲストを服用すると卵巣のはたらきが抑制されるため、月経自体が止まりやすい状態となります。
そのため、月経に伴うPMSの症状も軽減され、心身の不調が和らぐ可能性があります。
PMSに加えて月経困難症を抱えている方の場合、月経の前から不調が始まり、月経時には痛みや不快感が発生して日常生活に支障をきたします。ディナゲストはそのような症状を軽減し、日常生活を過ごしやすくすることが期待できます。
ディナゲストの適性をチェックして治療を検討しよう
今回は、ディナゲスト(ジエノゲスト)の特徴と0.5mgと1mgの違い、服用方法や副作用について紹介しました。
黄体ホルモンの一種であるディナゲストは、卵巣のはたらきを抑え子宮内膜を厚くさせない薬です。
通常どおりの月経でPMSやその他のトラブル・疾患が悪化しやすい方に適しており、服用する方の年齢層やライフスタイルにも左右されにくいため、低用量ピルの代替案としても用いられています。
医師の診察や検査結果にもよりますが、服用できる人が限られる低用量ピルや更年期症状が現れやすい偽閉経療法と比較して緩やかに作用するため、治療方法のひとつとして検討してみてはいかがでしょうか。