ブログ

コルポスコピー検査の結果や検査後の流れを詳しく解説

子宮頸がん検診で“異常あり”と診断され、不安な思いで過ごしている方も少なくないでしょう。
20~30代の若い世代でも疾患し、30歳以降になると徐々に死亡率が増加する子宮頸がんは、早期発見のためにも精密検査が重要です。

本記事では、子宮頸がん検診で“異常あり”と診断されたあとに行う、コルポスコピー検査について解説します。
検査の結果の捉え方や、治療の流れなども後半で解説していますので、最後までご一読ください。

子宮頸がんについておさらい

子宮頸がんの95%は、HPV(ヒトパピローマウイルス)に感染することによって発症しています。
この感染症は、性交渉をしたことがある女性のうち80~90%が、一生に一度は感染するといわれています。
そのため、感染すること自体は何も珍しいことではありません。
なかでもおよそ90%の方は一過性の感染であり、自己免疫によってウイルスが排除されるので、やみくもに不安になる必要はないでしょう。
しかし約10%の方がHPVの長期にわたる感染が持続し、自然治癒せずに数年から数十年のときを経て、前がん病変という子宮頸がんになる前の状態になります。 このように正常な状態とがんのあいだの段階を“異形成”とよび、進行すると子宮頸がんを発症します。
つまり子宮頸がんは正常の段階から突然発症するのではなく、異形成を経て、徐々にがんへと移行していくというわけです。
参照元:がん情報サービス

子宮頸がん検診の種類

子宮頸がん検診は、“細胞診検査”または“HPV検査単独法”のいずれかを受けることから始めます。
対象年齢や検診の間隔が異なるだけで、どちらも検体を採取する方法は同じです。
この段階で所見があれば、精密検査が必要となり、コルポスコピー検査および生検(組織診)を受けることになります。
細胞診検査とHPV検査単独法の詳細は、以下をご覧ください。

①細胞診検査

細胞診検査は、子宮頸部(子宮の入り口)を専用のブラシで軽くこすって細胞を採取し、異常な細胞がないかを顕微鏡で調べる方法です。 痛みを感じることは少なく、1~2分あれば終了するので安心してください。
細胞診検査で“異常なし”と判定された場合、精密検査は不要です。
ただし、子宮頸がんのリスクを管理し、早期に異常を発見するためにも、2年に1回の検診は必ず受けましょう。
一方で異常が見つかった際は、「症状が出てないからいいや」「次回の検診で再度異常が見つかったら受けよう」などと放置してはなりません。
異形成の段階では、具体的な症状を自覚することなく子宮頸がんへと進行していくので、細胞の状態を詳しく調べるためにも精密検査の受診は必須です。
なお、20歳以上であれば、お住まいの自治体からクーポンが届いて、無料または少ない負担で細胞診検査を受けられます。
精密検査で用いられるコルポスコピー検査および生検(組織診)は、このあと詳しく解説します。

②HPV検査単独法

細胞診検査のほかに、新たに2024年4月から始まったのがHPV検査単独法です。 HPVは、200以上の種類があるとされています。
HPV検査単独法では、そのなかでも特に子宮頸がんを引き起こす危険性の高い13種類のハイリスクHPVに感染しているかを調べます。
HPV検査で“陰性”と判定された場合、精密検査は必要ないため、5年後にもう一度HPV検査による子宮頸がん検診を受けましょう。
一方で“陽性”となった場合は、残った検体で前述の細胞診検査が実施され、細胞に異常がないか調べてくれます。(受診不要)
これをトリアージ精検といい、検査で“異常なし”の場合はまずは様子を見て、追跡精検として1年後に再度HPV検査を受けます。
追跡精検を受けることによって、HPVウイルスによる一時的な感染なのか、それとも持続感染なのかを判断してもらえるわけです。
細胞診検査で“異常あり”の結果が出た場合は、コルポスコープおよび生検による精密検査を受けて、前がん病変の進行段階を詳しく調べてもらいましょう。
なお、2024年10月現在、HPV検査単独法が住民健診で受けられるのは、厚生労働省の要件を満たした自治体のみで、30歳以上の方のみが対象となっています。 お住まいの自治体で実施されているかは、ホームページや広報などでご確認ください。

【精密検査】コルポスコピー検査および生検(組織診)とは

コルポスコピー検査は、子宮頸がん検診の精密検査の一つで、コルポスコープ(膣拡大鏡)というカメラを用いて、子宮頸部の細かい部分を観察します。
ほとんどの方は、子宮頸部の異常が疑われる組織を少しだけ切り取り、病変の深さを調べる“生検(組織診)”という検査が同時に実施されます。
コルポスコピー検査や生検(組織診)、ときにハイリスクHPV検査を組み合わせたものをまとめて精密検査とよび、異形成の段階やがんの有無をより正確に判断しているのです。

コルポスコピー検査の結果はどう考えたらいいの?

コルポスコピー検査の結果、子宮頸管や膣部の組織が正常に見える場合、子宮頸がんのリスクは低いと考えられ、通常は定期的な子宮頸がん検診を継続することが推奨されます。

ただし、これは絶対的な安全を意味するわけではなく、再度、異常な細胞が検出される可能性もありますので、継続的なスクリーニングは重要です。

異常が見つかった場合、その程度によって対応が異なります。

軽度〜中等度の異常(軽度異形成)の場合、経過観察が行われます。

これは、多くの場合自然に治癒することがあるからです。しかし、高度の異形成、またはがんの疑いがある場合は、手術が行われることがあります。

コルポスコピーでは、必要に応じて生検が行われることがあります。

これにより、異形成の分類やがんの有無をより正確に判断できます。また、子宮膣部に酢酸を塗布して異常細胞をより見やすくします。

結果に関わらず、定期的なスクリーニングと医師の勧めに従うことが非常に重要です。

これにより、子宮頸がんのリスクを管理し、早期に異常を発見することができます。

子宮頚がんのリスクは、HPV(ヒトパピローマウイルス)感染、喫煙、免疫系の問題、早い年齢での性行為開始などに影響されます。

コルポスコピー検査は、これらのリスク要因を持つ女性に特に重要で、異常を早期に発見することで治療の成功率を高めることができます。

コルポスコピー検査の結果はどのぐらいで出るの?

コルポスコピー検査を含む精密検査の結果が出るまでの期間は、どのような種類の検査が行われたかによって異なります。
検査中に目視で異常が確認された場合、医師はその場で一定の診断を下すこともあるでしょう。

その際、組織のサンプルを採取する生検が行われたら、そのサンプルは病理学的検査に送られます。

病理学的検査の結果が出るまでには、2週間程度の時間を要することが一般的ですが、施設や検査の混雑状況によってはもう少し時間がかかるかもしれません。

最終的な結果は診察時に説明され、必要に応じてさらなる治療計画が決定されます。

コルポスコピー検査の結果とその後の流れ

コルポスコピー検査をはじめとする精密検査によって、子宮頸がんの前がん病変である異形成の段階が明らかになります。 診断結果を3つに分けて、詳しく解説していますのでご覧ください。 ※

結果:異常なし

精密検査の結果、子宮頸管や膣部の組織が正常である場合、子宮頸がんのリスクは低いと考えられます。
しかし、この結果は絶対的な安全を意味するわけではありません。 再度異常な細胞が検出される可能性も考慮して、継続的なスクリーニングが重要視されているため、およそ1年に1回の定期的な検診を継続することが推奨されています。

結果:軽度異形成~中等度異形成(CIN1、CIN2)

軽度異形成(CIN1)あるいは中等度異形成(CIN2)と診断された場合は、自然に治ることも多いので、経過観察となるのがほとんどです。
しかし、軽度異形成の方の約3~5%が、中等度異形成では約10~20%の方が、高度異形成や上皮内がんに移行することがわかっています。 そのため、軽度異形成では“6か月”ごと、軽度異形成よりもさらに注意深い経過観察が必要な中等度異形成では、“3か月”ごとの定期的な検査を必ず受けましょう。
また、ときに長期間持続する中等度異形成に対しては、医師の判断で、子宮頸部レーザー蒸散術で治療する選択をとられる場合もあります。 どのような方が高度異形成、あるいはその先の子宮頸がんに進行するかは、現在の医療技術をもってしても判断することはできません。
ですので、どちらの結果であっても定期的な健診は欠かしてはならないものです。

結果:高度異形成・上皮内がん(CIN3)

高度異形成、または上皮内がんの疑いがある場合は、手術を選択されるケースがほとんどです。
完全にがんになる一歩手前の状態であっても、子宮頸部を円錐状に切除する“円錐切除術”で子宮頸がんへの進行を予防することができます。
この術式では子宮を温存できるため、将来的な妊娠や出産の可能性を残せるのがメリットの一つです。
なお、この円錐切除術では、「術後の妊娠における切迫早産の危険性がやや高くなる」というのが定説です。
したがって、これから妊娠を望む年代の方は、手術の適応に関する慎重な判断が下されることとなるでしょう。

子宮頸がんになりやすい人はいる?

記事の前半でも述べたように、性交経験が一度でもある女性なら、誰でも子宮頸がんになる可能性があります。
そのなかでも、早い年齢での性行為開始や、不特定多数のパートナーとの性行為などは、HPV感染のリスクを高めることがわかっています。 しかしここで覚えてほしいのは、“性行為の回数が多い人=子宮頸がんになりやすい”のは間違いであるということです。
極端な話、数十回感染してすべて自己免疫で消滅する方もいれば、たった1回の感染でそのままがんになってしまう方もいます。
子宮頸がんの原因は、あくまでも“HPVへの持続的な感染”です。
性行為の相手が、特定のパートナーだけでもあっても、そのパートナーがHPVに感染している場合、HPV感染が持続する要因となります。
また子宮頸がんのリスクは、喫煙によっても高くなるという研究結果もあります。 このようなリスク要因を持つ女性は、細胞診やコルポスコピー検査を含む精密検査が特に重要で、異常を早期発見することで治療の成功率を高められるのです。

【覚えておきたい】HPVワクチンという選択肢

2024年10月現在の日本で接種できる子宮頸がんワクチンは、新たに接種開始となった9価(シルガード)と従来の4価(ガーダシル)、2価(サーバリックス)の計3種類です。

 

9価(シルガード)

4価(ガーダシル)

2価(サーバリックス)

予防できるHPVの型

l   90%の子宮頸がん(高リスク型:16,18,31,33,45,52,58型)

l   尖圭コンジローマ(低リスク型:6,11型)

l   70%の子宮頸がん(高リスク型:16,18型)

l   尖圭コンジローマ(低リスク型:6,11型)

l   70%の子宮頸がん(高リスク型:16,18型)


子宮頸がんワクチンは、計3回接種を行う必要がありますが、小学6年生から高校1年生の女子であれば公費(自己負担なし)で接種可能です。
対象年齢が過ぎている場合でも、26歳までの女性であれば国は接種を推奨していますし、海外では45歳までの接種でも効果が認められたという研究結果もあります。
接種は自費となりますが、9価(シルガード)であれば、病院によって費用は多少異なるものの、7万~10万円で計3回接種できます。
一度免疫力がついてしまえば、その予防効果は推計で少なくとも20年間は続くとされており、日本で接種が推奨されているのはこれが理由です。 しかし、すでにHPVに感染している方は、ワクチンを接種してもウイルスを殺す効果は得られません。
また、発症している子宮頸がんを治す作用もなく、ワクチンの効果は接種後の感染予防の効果のみであることを覚えておきましょう。
何より大切なのは、ワクチン接種の有無や異形成の段階にかかわらず、性交渉の経験が一度でもあるのであれば、子宮頸がん検診を定期的に受けるということです。
検診によって早期発見ができれば、治療できる可能性は高まりますから、ご自身の大切な身体を守りましょう。

コルポスコピー検査および生検(組織診)で異形成が見つかったら、定期検診を必ず受けよう

本記事では、コルポスコピー検査および生検(組織診)の結果の見方や、その後の治療の流れを詳しく解説しました。
精密検査で、軽度異形成または中等度異形成と診断された場合は、3~6か月の定期健診を必ず受けましょう。 がんの一歩手前である高度異形成と診断された場合でも、円錐切除術で子宮を温存させることができます。
Ladies clinic LOG原宿では、子宮頸がん検診やコルポスコピーによる精密検査を実施しております。
子宮頸がん検診だけでなく、少しでもご自身の身体のことで気になる症状があれば、気軽にご来院ください。

コルポスコピー検査のページへ

LINE予約はこちらから

Web予約はこちらから

監修者

院長

清水拓哉

経歴

  • 杏林大学医学部卒業
  • 筑波大学附属病院初期研修
  • けいゆう病院後期研修
  • 横浜総合病院などで勤務した後に開業

資格

  • 日本産婦人科学会専門医
  • 産婦人科内視鏡技術認定医

所属学会

  • 日本産婦人科学会
  • 日本産婦人科内視鏡学会
  • 日本子宮鏡研究会

手術実績(通算)

  • 腹腔鏡手術・700件以上
  • 開腹手術・150件以上
  • 帝王切開・300件以上
  • 分娩(経腟分娩)・1000件以上
TOPへ